萌えすぎて禿げる
鬼道さんの彼女が不動にちょっかいかけてる話
「すきすきすきすき」
「俺に云うなよ」
スパン、と断ち切られた。
優しくない。
明王は私に全然優しくないと思う。
ハムスターの如く頬に空気をためて明王を睨みつけたが、明王は雑誌から眼も上げずに云った。
「怖かねぇし可愛かねぇ」
「うっさい」
「きゃぁ怖い!でも可愛い!」
「はっ倒すよ」
「もうお前鬱陶しいから出てけよ」
辛辣な言葉のあとにわざとらしい言動、あまつ犬でも追いやるようにしっしと手を振る。
まったく酷い男である、不動明王と云う男は。
「だから友達出来ないんだよ」
「うるせぇよ俺は好きでひとりでいるんだよ」
今度は丸めた雑誌で殴られた。
図星をついてやったらこれだよ。
「痛い」
「痛くしたんだよ」
「ドSですね!」
「泣かすぞ」
「やれるもんならやってみろ」
べろべろばー。
今時こんなことする小学生すらいないだろうな、と思いつつもやらずにはいられなかった私は中学生です。2年
前まで小学生だったんだし許容範囲だよね。明王が痛いものを見る目で見ていたけど、それは奪い取った雑誌で側頭部を叩いてやったので気にしない。
「つるつるしてるからいい音したね」
「犯すぞ」
「きゃー強姦魔がいるわ!」
「い、い、か、げ、ん、に、し、な、さ、い」
「ごめんごめん痛い痛いアイアンクローは痛い痛い痛い」
素直に謝るとすぐに放してくれたけど地味に痛みが残っている。自分の握力を把握したうえでやってほしい。
いや、把握したらやらないで欲しい。ここは身体能力が標準以上の人たちばかりの集まりなのだから。
「で?」
「はい?」
「鬼道ちゃんとなんかあったのか」
首を傾げると、首を傾げられた。
何か?
考える。
別に何もない。
が。
「ああ、ただね、鬼道くんが好きだなって思って」
「ソウデスカ。で?」
「そんだけ」
「お前ふざけてんのか」
「ふざけてないよ惚気にきたんだあたたたたたたたたたた痛い痛いアイアンクローは痛いってば明王ちゃーん痛いです!!!」
正面からのアイアンクローの隙間から見えた明王は笑顔だった。
今まで見たこともないくらい笑顔だった。
でも今まで見たことないくらいでっかい青筋も浮かんでた。
よっぽど腹に据えかねたんだろうなぁなんて他人事みたいに考えてたら意識が遠くなってきた。
加害者と被害者
(不動、お前何やっている)
(てめぇの女はしっかり躾しときやがれ)
(鬼道くん、今私いやらしいことされるところだった)
(死ねクソ女)
(よし不動、死ぬ覚悟は出来たな?)
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シュチェーション?何それ