クーラーかけてる上に冷たいの飲んだからだろうか・・・貧弱すぎる自分の腹にshit!←
でも出勤してすぐは、店ん中もあっとしてて暑いのですよ・・・さしもの私も、というか普通に店的にクーラーはつけねばならないというか。部屋が蒸し暑いマッサージ屋とか嫌過ぎるwww
出勤してすぐは冷たいの1杯飲んで、そのあとはあったかいのにすればよかった・・・冷たいの2杯目、腹が金切り声をあげておりまする。おおおおおおお(ごろんごろん)
続きに、「フェンネル大陸」シリーズのお話一つ上げておきます。
知らないですよねきっと。薬屋探偵シリーズ書いてるのと同じ人の作品なんですけど・・・知らないですよね・・・
果てしなく自己満足ですが、いつか書きたいな~と思ってます。
補足
・名前・・・ティア(現時点では)
・シスタス先代大司教ヘルボルスの妹
・アーヴィングの妻で幼馴染
・薬師
こんなもんだろうか・・・
とりあえず、ラビッジとシスタスが滾る。大好きだ。
でも出勤してすぐは、店ん中もあっとしてて暑いのですよ・・・さしもの私も、というか普通に店的にクーラーはつけねばならないというか。部屋が蒸し暑いマッサージ屋とか嫌過ぎるwww
出勤してすぐは冷たいの1杯飲んで、そのあとはあったかいのにすればよかった・・・冷たいの2杯目、腹が金切り声をあげておりまする。おおおおおおお(ごろんごろん)
続きに、「フェンネル大陸」シリーズのお話一つ上げておきます。
知らないですよねきっと。薬屋探偵シリーズ書いてるのと同じ人の作品なんですけど・・・知らないですよね・・・
果てしなく自己満足ですが、いつか書きたいな~と思ってます。
補足
・名前・・・ティア(現時点では)
・シスタス先代大司教ヘルボルスの妹
・アーヴィングの妻で幼馴染
・薬師
こんなもんだろうか・・・
とりあえず、ラビッジとシスタスが滾る。大好きだ。
厳格な佇まいの神殿を仰ぐ。
これが最期になるかもしれない。
そう思うと、不思議と暖かな我が家に見えてくるから困る。
何故なら自分はこれから祖国を裏切るのだ。だというのに、その祖国の中心に愛着など。
「・・・・・・・・・」
背筋をピンと伸ばす。
踵と踵を揃える。
両腕を身体の脇にピタリと付ける。
そして。
「いってきます、兄上」
腰を折り、上半身は石畳の面と平行になった。
これは、けじめであり、そして自己満足のエゴだ。
自分の不注意が招いた惨事に対しての贖罪だ。
過去を悔いても過去は過去で、今更事態が変わるわけもなし、まして、死んだ人たちが戻ってくるはずもない。
けれど、それでも。
行かなければならないと、思った。
「ティア」
折った腰を戻した背に、出来れば聞きたくなかった声がぶつかった。
見つかってしまった。
きっと彼は私を止めはしないけれど、私を引き止めようとする言葉を云う。
何より、私自身が。
まともに彼を見て、決心を揺るがせない自信がなかった。
なんて脆弱な決心。
内心で己を罵りながら、声は努めて冷静なまま、少し離れた場所から私を呼んだ彼に返事をする。
「暇なの、アーヴィング」
「どこへ行く」
「近衛隊の訓練は?」
「ティア」
振り向かない。
否、振り向けない。
彼は、アーヴィングは今どんな顔をしているだろう。呆れているだろうか。怒っているだろうか。それとも。
カツン、ブーツの踵が鳴る。私のものではない。ここには私とアーヴィングしかいない。
「どうしても、行くのか」
ふわり、と。
背中から、抱き締められた。
暖かい。
慣れた温もりが懐かしくて、じわりと目許が熱くなる。一気に零れそうになったそれを、きつく瞼で閉ざすことで塞き止めた。
首筋に埋められたアーヴィングの顔は、もうすぐ懐古の思い出に切り替わる。
歯を食いしばり、身体の前で組まれたアーヴィングの手に手を添えた。皮手袋越しでも震えているのを感じてしまい、どうしようもなく寂しくなった。
私は、アーヴィングを置いていく。
永遠を願ったのは出逢ってすぐで、永遠を誓ったのは3年前。
願い、誓ったはずの永遠を反故にするのは私の罪悪だ。
我が儘で、勝手だ。
そんな私を、未だにアーヴィングは愛してくれる。
「ごめん」
零れた謝罪が何に対してなのか、もはやわからないほど私は罪を犯した。
アーヴィングの腕に更に力がこもり、私をきつく締め付ける。
振り払わなければ、ならない。
私には、この優しさを受ける資格がない。
なくなった。
失った。
自分の甘さがそうさせた。
ゆっくりと、己に有らん限りの呪詛の言葉を吐き出しながら、重ねた手を離す。
そっと押すとすぐに力を失うアーヴィングの手に、自嘲が零れた。
彼はわかっている。
すべて承知の上で、ここへ来た。
私を見送るために。
最期の逢瀬のために。
「アーヴィング」
きっと、この先の人生でこの名を呼ぶことはないのだろう。
誰より愛したこの名を、私は生涯忘れず、しかし口にすることはないに違いない。
すべては私の罪。
だから彼は、自由になるべきだ。
ならなければ、ならない。
「―――別れましょう」
二度と会わない生きた伴侶など邪魔なだけだ。
彼に好意を寄せる魅力的な女性はごまんといる。その中には、彼の目に留まる人もいるだろう。
彼が自分だけの彼でなくなるかとは酷く辛いけれど、私に縛られず彼が自由になれるのならば、こんな辛さは我慢出来る。
大丈夫。
アーヴィングは、幸せになる。
と、軋んだ胸に手を当て返事を待っていると、帰ってきたのは予想外の一言だった。
「断る」
一瞬、意味がわからなくて呼吸を忘れた。
幾度かの瞬きのあと、漸く彼の答えが自分の予想と間逆であることに気付き、思わず勢い良く振り向いてしまった。
「どうしてっ」
「嫌だからだ」
今度こそ云うべき言葉が見つからず、魚のように口をパクパクさせて酸素だけを取り込んだ。
嫌だから。
そんな、子供染みた理由で残りの人生を棒に振るつもりだろうか。
真顔のアーヴィングを暫く呆然と眺めてしまったが、ふいにカッと頭に血が昇ってきた。
馬鹿だ。
そんな馬鹿な理由があってたまるものか。
「アーヴィング!!」
叫んだのは、愛しい名前。
今日を境に己に封印する、名前。
すべてわかってくれていると思ったのに、肝心なところだけはわかってくれていない。
こんなのだから女心のわからない朴念仁だと云われるのだ。
文句を。
盛大な文句を云ってやらなければ、気が済まない。
―――ああ。それなのに。
「ティア」
喉が、震えて。
「泣くな」
急に、水の中に飛び込んだみたいに目の前がぐにゃぐにゃと歪んで。
「泣かないでくれ」
いつの間にか皮手袋を外し、素手になっていたアーヴィングの肉刺だらけの無骨な手が、私の頬に触れる。
泣いているのだと、濡れた彼の手を見て初めて気付いた。
「私は死ぬわ」
「まだ生きている」
「でもラビッジは」
「お前が死んだら、九世までも迎えに行こう」
「アーヴィング」
「生きていてくれるならば、それが例え世界の果てでも構わない」
息を飲む。
涙が引っ込んだ。
不躾なほどまじまじとアーヴィングを見ると、闇色の双貌に私が映る。ああ、いっそこの瞳の中に閉じ込められたなら。そんな馬鹿げたことを考える。
何も云えない私に、アーヴィングは静かに告げた。
「もう二度と逢えないのだとしても、私は、この命と剣への誇りに掛けて、生涯お前を想い続けることを誓おう」
ラビッジへ行くと決めたとき、同時に死を覚悟した。
兄上、義姉上、ローゼル様の想いを、私は見届けなければならなかった。
それを義務にしたのは私の傲慢さだ。
私は彼らの未来を根刮ぎ奪ってしまった。
その代償は計り知れない。
特に、ローゼル様へは死んでも償えないほどの罪を犯してしまった。
だから、私は見届ける。
ローゼル様が見るはずだったもの、感じるはずだったものを、死んだらあの方へ伝えるために。
そのために、私はラビッジへ行く。
王を失ったラビッジがどうなるかはわからない。聞けばローゼル様の弟君はまだ10にも満たない幼子だという。加えて政に関わることはほぼローゼル様が取り仕切っていたようで、先代―否、最早先々代となる――の崩御後、満足に国をまとめられなかった官吏たちがどこまで出来るのかは見当もつかない。
衰退か、繁栄か。
普通に考えて、誰もが衰退だと声を揃えるだろう。
もし、そうなっても。
構いはしない。
私は、ラビッジと命運を共にすると決めたのだ。
ローゼル様が愛した、ラビッジと。
「ひとりにしないでくれ」
死ぬのだと、思った。
ラビッジが繁栄出来るとは限らない。
王を失った混乱で、何が起きるかもわからない混沌の時代にもなるだろう。
今ラビッジに行くのはとても危険だ。
だから、死ぬのだと。
なのに。
「ひとりにならないでくれ」
アーヴィングが、あまりに愛おしくて。
「護れなかった俺も同罪だ。ひとりで罪を背負わないでくれ」
私は、アーヴィングのように強い人を知らない。
兄上も強かった。
けれど、それとはまた別の強さが彼にはあった。
どこがどう、と問われると困るのだが、私の直感が告げるのだ。
彼は強い、と。
「俺にも、お前と同じ哀しみを共有させてくれ」
幼い頃から知っていた。
まだ模擬の剣しか与えられず悔しがり、将来必ず近衛隊長になって周りをあっと云わせてやるのだと夢を語った記憶は微笑ましく懐かしい。
その、アーヴィングが。
「置いて行かれるのは、もう嫌だ」
泣いていた。
いつも真っ直ぐに前を見据え、弱さなど知らないかのようにどんなときも強く強く、強かったアーヴィングが。
「・・・アーヴィング」
嫌だ、と。
子供のように繰り返し、歯を食いしばって、泣いていた。
名前を呼び、ゆっくりと手を伸ばす。今度は私が、涙に濡れたアーヴィングの頬に触れる。
冷たい。
熱い。
もう頭がぐちゃぐちゃだった。
おかしくなりそうだった。
かける言葉も見つからず、私はアーヴィングの頭を思い切り抱き寄せた。すぐに背中に回ってきた手が頼りなくて、それが無性に虚しくなって涙が溢れた。
「アーヴィング」
呼ぶ。ひたすらに。
「アーヴィング、アーヴィング・・・ッ」
死を覚悟した。
けれど決して、死にたいわけではなかった。
出来ることなら、このままシスタスのアーヴィングの隣で添い遂げたい。
しかし、それはあまりに狡いのだ。
大切な人たちの未来を奪った私が、自分の未来を望むなど。
あまりにもそれは、傲慢すぎる。
私は未来を渇望しながら、決して手を伸ばすことを許されない。
「死ぬな、ティア」
抱き締められると、ああ、生きているのだと否応なく感じる。
私は生きている。
「俺はいつまでも、お前の帰りを待っている」
嬉しかった。
本当に嬉しくて、涙が止まらなかった。
本当は怖くて、心臓が破裂しそうだった。
置いていくことは、すなわち私自身からの離反だ。
それはつまり、私の中でのひとつの喪失。
失うこと。
私は、何よりもそれが恐ろしかった。
「俺は、お前の帰る場所でありたい」
耳から心に、アーヴィングの言葉が染みる。
嬉しくてどうしようもなくて、誰もいないのをいいことに、子供のように泣いた。
死は覚悟の上だ。
しかし、もしも生き長らえるならば。
そのときは。
「待っている」
「うん」
「俺は、ずっとここにいる。あの人たちの愛したシスタスを、護り続ける」
「うん」
「だから」
身体を離し、至近距離で見つめ合う。
少し赤くなった目許が、なんだか可愛らしかった。
「行っておいで」
交わした口付けは、今までのどんなロマンチックなものよりも情熱的で、忘れられない口付けだった。
そして私はシスタスを発ち、ラビッジへと向かった。
希望は抱いていない。
けれど、絶望もしていない。
ただ、あの優しい人たちの祈りが、いつか実現したらいい。
想い、私は今、ラビッジの地を踏んだ。
******
シスタスとラビッジの過去が好きすぎる。
ホントこの人たち素敵だよ・・・メインでもいいよ!フェンもテオもサチもロカもアシュレイもみんな好きだけど、過去が大好きすぎて苦しい。マッドとローゼル様素敵カップル過ぎて辛い
高里さんの本は、伏線が多すぎて一回目はあんまり理解出来ないけど、二回目読むとすごく楽しい。あ~な~るほど!ってなります。あと新刊出るスパンが長すぎて内容忘れるってのもあるwww
来月も新刊発売らしいので楽しみです。ギル兄様・・・好きだ・・・!←
これが最期になるかもしれない。
そう思うと、不思議と暖かな我が家に見えてくるから困る。
何故なら自分はこれから祖国を裏切るのだ。だというのに、その祖国の中心に愛着など。
「・・・・・・・・・」
背筋をピンと伸ばす。
踵と踵を揃える。
両腕を身体の脇にピタリと付ける。
そして。
「いってきます、兄上」
腰を折り、上半身は石畳の面と平行になった。
これは、けじめであり、そして自己満足のエゴだ。
自分の不注意が招いた惨事に対しての贖罪だ。
過去を悔いても過去は過去で、今更事態が変わるわけもなし、まして、死んだ人たちが戻ってくるはずもない。
けれど、それでも。
行かなければならないと、思った。
「ティア」
折った腰を戻した背に、出来れば聞きたくなかった声がぶつかった。
見つかってしまった。
きっと彼は私を止めはしないけれど、私を引き止めようとする言葉を云う。
何より、私自身が。
まともに彼を見て、決心を揺るがせない自信がなかった。
なんて脆弱な決心。
内心で己を罵りながら、声は努めて冷静なまま、少し離れた場所から私を呼んだ彼に返事をする。
「暇なの、アーヴィング」
「どこへ行く」
「近衛隊の訓練は?」
「ティア」
振り向かない。
否、振り向けない。
彼は、アーヴィングは今どんな顔をしているだろう。呆れているだろうか。怒っているだろうか。それとも。
カツン、ブーツの踵が鳴る。私のものではない。ここには私とアーヴィングしかいない。
「どうしても、行くのか」
ふわり、と。
背中から、抱き締められた。
暖かい。
慣れた温もりが懐かしくて、じわりと目許が熱くなる。一気に零れそうになったそれを、きつく瞼で閉ざすことで塞き止めた。
首筋に埋められたアーヴィングの顔は、もうすぐ懐古の思い出に切り替わる。
歯を食いしばり、身体の前で組まれたアーヴィングの手に手を添えた。皮手袋越しでも震えているのを感じてしまい、どうしようもなく寂しくなった。
私は、アーヴィングを置いていく。
永遠を願ったのは出逢ってすぐで、永遠を誓ったのは3年前。
願い、誓ったはずの永遠を反故にするのは私の罪悪だ。
我が儘で、勝手だ。
そんな私を、未だにアーヴィングは愛してくれる。
「ごめん」
零れた謝罪が何に対してなのか、もはやわからないほど私は罪を犯した。
アーヴィングの腕に更に力がこもり、私をきつく締め付ける。
振り払わなければ、ならない。
私には、この優しさを受ける資格がない。
なくなった。
失った。
自分の甘さがそうさせた。
ゆっくりと、己に有らん限りの呪詛の言葉を吐き出しながら、重ねた手を離す。
そっと押すとすぐに力を失うアーヴィングの手に、自嘲が零れた。
彼はわかっている。
すべて承知の上で、ここへ来た。
私を見送るために。
最期の逢瀬のために。
「アーヴィング」
きっと、この先の人生でこの名を呼ぶことはないのだろう。
誰より愛したこの名を、私は生涯忘れず、しかし口にすることはないに違いない。
すべては私の罪。
だから彼は、自由になるべきだ。
ならなければ、ならない。
「―――別れましょう」
二度と会わない生きた伴侶など邪魔なだけだ。
彼に好意を寄せる魅力的な女性はごまんといる。その中には、彼の目に留まる人もいるだろう。
彼が自分だけの彼でなくなるかとは酷く辛いけれど、私に縛られず彼が自由になれるのならば、こんな辛さは我慢出来る。
大丈夫。
アーヴィングは、幸せになる。
と、軋んだ胸に手を当て返事を待っていると、帰ってきたのは予想外の一言だった。
「断る」
一瞬、意味がわからなくて呼吸を忘れた。
幾度かの瞬きのあと、漸く彼の答えが自分の予想と間逆であることに気付き、思わず勢い良く振り向いてしまった。
「どうしてっ」
「嫌だからだ」
今度こそ云うべき言葉が見つからず、魚のように口をパクパクさせて酸素だけを取り込んだ。
嫌だから。
そんな、子供染みた理由で残りの人生を棒に振るつもりだろうか。
真顔のアーヴィングを暫く呆然と眺めてしまったが、ふいにカッと頭に血が昇ってきた。
馬鹿だ。
そんな馬鹿な理由があってたまるものか。
「アーヴィング!!」
叫んだのは、愛しい名前。
今日を境に己に封印する、名前。
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こんなのだから女心のわからない朴念仁だと云われるのだ。
文句を。
盛大な文句を云ってやらなければ、気が済まない。
―――ああ。それなのに。
「ティア」
喉が、震えて。
「泣くな」
急に、水の中に飛び込んだみたいに目の前がぐにゃぐにゃと歪んで。
「泣かないでくれ」
いつの間にか皮手袋を外し、素手になっていたアーヴィングの肉刺だらけの無骨な手が、私の頬に触れる。
泣いているのだと、濡れた彼の手を見て初めて気付いた。
「私は死ぬわ」
「まだ生きている」
「でもラビッジは」
「お前が死んだら、九世までも迎えに行こう」
「アーヴィング」
「生きていてくれるならば、それが例え世界の果てでも構わない」
息を飲む。
涙が引っ込んだ。
不躾なほどまじまじとアーヴィングを見ると、闇色の双貌に私が映る。ああ、いっそこの瞳の中に閉じ込められたなら。そんな馬鹿げたことを考える。
何も云えない私に、アーヴィングは静かに告げた。
「もう二度と逢えないのだとしても、私は、この命と剣への誇りに掛けて、生涯お前を想い続けることを誓おう」
ラビッジへ行くと決めたとき、同時に死を覚悟した。
兄上、義姉上、ローゼル様の想いを、私は見届けなければならなかった。
それを義務にしたのは私の傲慢さだ。
私は彼らの未来を根刮ぎ奪ってしまった。
その代償は計り知れない。
特に、ローゼル様へは死んでも償えないほどの罪を犯してしまった。
だから、私は見届ける。
ローゼル様が見るはずだったもの、感じるはずだったものを、死んだらあの方へ伝えるために。
そのために、私はラビッジへ行く。
王を失ったラビッジがどうなるかはわからない。聞けばローゼル様の弟君はまだ10にも満たない幼子だという。加えて政に関わることはほぼローゼル様が取り仕切っていたようで、先代―否、最早先々代となる――の崩御後、満足に国をまとめられなかった官吏たちがどこまで出来るのかは見当もつかない。
衰退か、繁栄か。
普通に考えて、誰もが衰退だと声を揃えるだろう。
もし、そうなっても。
構いはしない。
私は、ラビッジと命運を共にすると決めたのだ。
ローゼル様が愛した、ラビッジと。
「ひとりにしないでくれ」
死ぬのだと、思った。
ラビッジが繁栄出来るとは限らない。
王を失った混乱で、何が起きるかもわからない混沌の時代にもなるだろう。
今ラビッジに行くのはとても危険だ。
だから、死ぬのだと。
なのに。
「ひとりにならないでくれ」
アーヴィングが、あまりに愛おしくて。
「護れなかった俺も同罪だ。ひとりで罪を背負わないでくれ」
私は、アーヴィングのように強い人を知らない。
兄上も強かった。
けれど、それとはまた別の強さが彼にはあった。
どこがどう、と問われると困るのだが、私の直感が告げるのだ。
彼は強い、と。
「俺にも、お前と同じ哀しみを共有させてくれ」
幼い頃から知っていた。
まだ模擬の剣しか与えられず悔しがり、将来必ず近衛隊長になって周りをあっと云わせてやるのだと夢を語った記憶は微笑ましく懐かしい。
その、アーヴィングが。
「置いて行かれるのは、もう嫌だ」
泣いていた。
いつも真っ直ぐに前を見据え、弱さなど知らないかのようにどんなときも強く強く、強かったアーヴィングが。
「・・・アーヴィング」
嫌だ、と。
子供のように繰り返し、歯を食いしばって、泣いていた。
名前を呼び、ゆっくりと手を伸ばす。今度は私が、涙に濡れたアーヴィングの頬に触れる。
冷たい。
熱い。
もう頭がぐちゃぐちゃだった。
おかしくなりそうだった。
かける言葉も見つからず、私はアーヴィングの頭を思い切り抱き寄せた。すぐに背中に回ってきた手が頼りなくて、それが無性に虚しくなって涙が溢れた。
「アーヴィング」
呼ぶ。ひたすらに。
「アーヴィング、アーヴィング・・・ッ」
死を覚悟した。
けれど決して、死にたいわけではなかった。
出来ることなら、このままシスタスのアーヴィングの隣で添い遂げたい。
しかし、それはあまりに狡いのだ。
大切な人たちの未来を奪った私が、自分の未来を望むなど。
あまりにもそれは、傲慢すぎる。
私は未来を渇望しながら、決して手を伸ばすことを許されない。
「死ぬな、ティア」
抱き締められると、ああ、生きているのだと否応なく感じる。
私は生きている。
「俺はいつまでも、お前の帰りを待っている」
嬉しかった。
本当に嬉しくて、涙が止まらなかった。
本当は怖くて、心臓が破裂しそうだった。
置いていくことは、すなわち私自身からの離反だ。
それはつまり、私の中でのひとつの喪失。
失うこと。
私は、何よりもそれが恐ろしかった。
「俺は、お前の帰る場所でありたい」
耳から心に、アーヴィングの言葉が染みる。
嬉しくてどうしようもなくて、誰もいないのをいいことに、子供のように泣いた。
死は覚悟の上だ。
しかし、もしも生き長らえるならば。
そのときは。
「待っている」
「うん」
「俺は、ずっとここにいる。あの人たちの愛したシスタスを、護り続ける」
「うん」
「だから」
身体を離し、至近距離で見つめ合う。
少し赤くなった目許が、なんだか可愛らしかった。
「行っておいで」
交わした口付けは、今までのどんなロマンチックなものよりも情熱的で、忘れられない口付けだった。
そして私はシスタスを発ち、ラビッジへと向かった。
希望は抱いていない。
けれど、絶望もしていない。
ただ、あの優しい人たちの祈りが、いつか実現したらいい。
想い、私は今、ラビッジの地を踏んだ。
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シスタスとラビッジの過去が好きすぎる。
ホントこの人たち素敵だよ・・・メインでもいいよ!フェンもテオもサチもロカもアシュレイもみんな好きだけど、過去が大好きすぎて苦しい。マッドとローゼル様素敵カップル過ぎて辛い
高里さんの本は、伏線が多すぎて一回目はあんまり理解出来ないけど、二回目読むとすごく楽しい。あ~な~るほど!ってなります。あと新刊出るスパンが長すぎて内容忘れるってのもあるwww
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