考えてみれば、入院や手術が決まった時から緊張感など皆無だった。担当医の気軽さ(気安さ?)のせいだったのかもしれないが、それにしても、と思い苦笑を禁じ得なかった。
一月半前、初めて手術の必要性を指摘されたとき。私は試験を直前に控えており、医師が当初指定した日時を即座に拒否した。致し方ないことである。何せ、すでに受験料を支払っていたのだから。あの嘘のように高い受験料を、いくら手術のためとはいえ棒に振ることなど私には出来なかった。何より、これまでの勉強が水の泡になることが嫌で仕方なかったのだ。
結局、次に担当医の手が空くのが先日であり、もっと早くにやりたかったのだと云う医師に苦笑いを返しながら、入院同意書にサインをした。
そして、やってきた手術日当日。
初めて入院する施設であるため、すんなり病室に通されるわけではなく、待合室や廊下で細かい説明を受けながら、病室へ通されたのは約30分後だった。4人部屋、手前左側が私のベッドだった。なぜか勝手に窓際になるだろうと思っていた私としては、地味にがっかりだったわけだが、そんなことは病院側の知ることではないので八つ当たりは予想と思う。私は大人だ。
手術着に着替えてから点滴が始まり、前の手術が長引いているようで少し待たされた。看護師が何度か顔を出し、『待ってる時間嫌ですよね、ごめんなさい』と云って行ったが、正直気になどしていなかったので、ただ笑って返しておいた。私は大人だ。
予定時刻から30分経過した頃、漸く担当医が顔を出した。
「ごめん、遅くなっちゃった!」
友達か。
つっこまない。私は大人だ。
いつものように愛想笑いを返し、さて移動なのかとベッドを下りようとすると、医師はおもむろに朱色のビンと、めんぼうを取り出した。
嫌な予感がする。
そしてこんなときに限って、私の予感は外れない。にこやかに笑った医師は、云った。
「とりあえず麻酔しようね」
ここでか。
ちなみに朱色のビンには液体の麻酔薬が入っており、めんぼうにしみこませ、鼻の粘膜に塗りつけるのである。いつもの治療でやっていることと同じだ。
しかしなぜ私がここで顔をひきつらせたのかと云うと、そもそも麻酔の一切効いていない鼻にめんぼうを突っ込むわけで、それなりに痛みを伴うものなのだ。
このとき担当医は見知らぬ若い医師を一人伴っていた。これまでの治療では一度も見ていない顔だ。ちらりとネームを見ても、知らない。ついでにあの手作り感溢れるネームからすると、おそらく研修医なのだろう。若干挙動不審な点からも、それは間違いなかった。
めんぼうを突っ込まれたあとは、同じく麻酔薬をしみこませたガーゼを2枚分鼻の奥まで詰め仕込まれる。これがまた痛い。麻酔してるから大丈夫、と笑う医師を何度殴り倒してやりたくなったことかわからないほど、痛い。しかし我慢。麻酔をしなければ手術は出来ないのだから。
嫌々ながらもその2つの麻酔処置を終え、漸く手術室に移動となる。移動中、恐らく緊張を緩和させるためか、看護師がやたらと話しかけてきた。
「緊張してる?」
「いえ、楽しみです」
「あら、珍しいねそういう人。たいていみんな、ここまで来ると怖くなるって云うんだけど」
「(やかましい)」
笑顔である。私は大人だ。
5分ほど歩き、手術室の前についた。テレビでしかまともに見たことのないような扉が、目の前に佇んでいた。緊張ではないが、なんだかむず痒い気持ちになってしまう。
付き添いに来ていた母とはここで別れ、私だけが中へ。これまたテレビでよく見る手術着を身に付けた担当者に引き継がれ、いよいよ手術室に。
新潟で救急車で運ばれたときに、実は部屋が空いてなかったため、使っていない手術室に押し込まれたことがあるので手術室自体は初めてではなかったが、まともに意識がある状態で入るのはこれが初めてだった。医師もまだ来ておらず、ゆっくりしてていいよ、と云われたため興味津津にあたりを見まわす。それにしても、ゆっくりしてていいよ、というのはどうだろう。一応手術前なのだが。まぁいいが。
とりあえずあまり準備の様子を眺めているのも申し訳ないと思いベッドに横になると、彼らはここぞとばかりに私の周りの準備を始めた。
まず心電図、血圧計をつけられ、そのあと腕をがっつりと手術台に固定された。
あまりにしっかりと固定されたので、私の表情は複雑そうになっていたのだと思う。固定していた手術助手が、苦笑しながら云う。
「両サイドに先生が立ちますから、念のためです」
念のためにしては些か度が過ぎている気がしたが、理由はわかるので納得する。確かに、手術中に患者の手が動いては気が散るだろう。
それからまた10分ほどで、手術着になった担当医と研修医が姿を現す。普段は白衣で胡散臭そうに見えるこの医師も、それなりの格好をすればそれなりに見えるものなのかと感心しつつ、着々と始まりそうになる雰囲気に、私の気分はそれなりに高揚していた。何せ、初めての手術が、最初から最後まで意識のある状態で行えるのだ。興奮するなと云うほうが無茶を云うと思う。個人的に一番見たい手術はACL再腱もしくは肩内視鏡下バンカート法術なのだが、それはまた置いておこう。
しかし。
私はこの時点で何かおかしいと思っていた。
明確な何かがあるわけではない。
曖昧で中途半端ではあるが、だが決定的に何かが、おかしいと思っていたのだ。
「先生、アレありませんよ」
「え、マジで?じゃあいいよ」
「アレの準備出来てる?」
「まだです、出てもません」
「えーちょっと早く出してよ」
「はいはい今出します」
「モニターに何も映ってないんだけど…」
「あら大変」
「まったく、ほんとだよ~しっかりしてよ!ねぇ?(←私に対して)」
ねぇ?じゃねーーーーーーよ^^^^
手術前だよな?
直前になって、緊張しない理由が分かった気がした。(ちなみにアレというのは、なんか器具のこと云ってたけど忘れた。)
この人たちに緊張感がなさすぎるのだ。
私は直感した。
―――こいつらおかしい。
仮にも患者がいるのだ。私が局麻で、意識を保って手術台に横たわっていることを知っているはずなのだ。
だというのに、あのような会話。神経質な患者だったら激怒してもおかしくない内容だと思うのだが、怒らなかった私は寛大だったのではないか。というよりも、呆気にとられて何を云えばいいのかわからなかったというのが正直なところだが、それにしても。
と、ここまで書いて飽きた^^
考えてみれば、最近まともな速度で更新をしていない私が、手術の光景すべて描写なんて無理に決まってた^^
でも骨が折れる感覚とか、頬の中を削られる感覚とか、内視鏡つっこまれる感覚とか、一生忘れない気がする。
ちなみに30分予定だったのが1時間半かかりました。
麻酔は効かなくて、通常の5~6倍使われました。
骨が厚かったうえに、鼻の中が狭くて道具が入らなくて苦労してました。
おかげで最初は和気あいあいと始まった手術も(それも絶対におかしい)、1時間を過ぎたあたりから先生のいらつきと焦りとで険悪な雰囲気に。お、おれのせいか…
で、結局、若干麻酔効いてなかったんですが、これ以上痛いって云ったら全麻になってもう一回手術になりそうだったので、我慢して削ってもらってしまいました。
すんげぇ痛かったけど、また手術になるよりましですわ。
伊達に、歯の治療を麻酔なしで受けた女ではないですよ、私は!
それを云ったら担当医におかしなものを見る目で見られましたが、
お前にそんな目で見られる覚えはない。断じて。
とりあえず無事終了!
たまに鼻血出るけど、健康!
ただ、解決したのは鼻だけなので、頚のほうは引き続き経過観察です。実はまだ痛い。もしかしたら、こっちも手術になるかもしれないのでドキドキです。次は全麻だけどね。
あ、ていうかそもそも私が局麻にしたのは手術の光景見たかったからなんだけど、残念ながら、モニターがちょうど先生の道具持ってる腕の位置にあったため、ほぼ見られませんでした。
「ほらこれ見える?」
「見えるか!!!」
云えなかった…お前の腕が邪魔なのだと、その一言が云えなかった…
ていうかモニター動くんだから、見える位置に移動してほしかった…
そんな感じ^^
あ、家に帰ってきたら、アフロと黒サガが届いてて発狂しそうになった
興奮したら本気で鼻血出るからダメなのに、あほほどテンションあがった…愛してる
一月半前、初めて手術の必要性を指摘されたとき。私は試験を直前に控えており、医師が当初指定した日時を即座に拒否した。致し方ないことである。何せ、すでに受験料を支払っていたのだから。あの嘘のように高い受験料を、いくら手術のためとはいえ棒に振ることなど私には出来なかった。何より、これまでの勉強が水の泡になることが嫌で仕方なかったのだ。
結局、次に担当医の手が空くのが先日であり、もっと早くにやりたかったのだと云う医師に苦笑いを返しながら、入院同意書にサインをした。
そして、やってきた手術日当日。
初めて入院する施設であるため、すんなり病室に通されるわけではなく、待合室や廊下で細かい説明を受けながら、病室へ通されたのは約30分後だった。4人部屋、手前左側が私のベッドだった。なぜか勝手に窓際になるだろうと思っていた私としては、地味にがっかりだったわけだが、そんなことは病院側の知ることではないので八つ当たりは予想と思う。私は大人だ。
手術着に着替えてから点滴が始まり、前の手術が長引いているようで少し待たされた。看護師が何度か顔を出し、『待ってる時間嫌ですよね、ごめんなさい』と云って行ったが、正直気になどしていなかったので、ただ笑って返しておいた。私は大人だ。
予定時刻から30分経過した頃、漸く担当医が顔を出した。
「ごめん、遅くなっちゃった!」
友達か。
つっこまない。私は大人だ。
いつものように愛想笑いを返し、さて移動なのかとベッドを下りようとすると、医師はおもむろに朱色のビンと、めんぼうを取り出した。
嫌な予感がする。
そしてこんなときに限って、私の予感は外れない。にこやかに笑った医師は、云った。
「とりあえず麻酔しようね」
ここでか。
ちなみに朱色のビンには液体の麻酔薬が入っており、めんぼうにしみこませ、鼻の粘膜に塗りつけるのである。いつもの治療でやっていることと同じだ。
しかしなぜ私がここで顔をひきつらせたのかと云うと、そもそも麻酔の一切効いていない鼻にめんぼうを突っ込むわけで、それなりに痛みを伴うものなのだ。
このとき担当医は見知らぬ若い医師を一人伴っていた。これまでの治療では一度も見ていない顔だ。ちらりとネームを見ても、知らない。ついでにあの手作り感溢れるネームからすると、おそらく研修医なのだろう。若干挙動不審な点からも、それは間違いなかった。
めんぼうを突っ込まれたあとは、同じく麻酔薬をしみこませたガーゼを2枚分鼻の奥まで詰め仕込まれる。これがまた痛い。麻酔してるから大丈夫、と笑う医師を何度殴り倒してやりたくなったことかわからないほど、痛い。しかし我慢。麻酔をしなければ手術は出来ないのだから。
嫌々ながらもその2つの麻酔処置を終え、漸く手術室に移動となる。移動中、恐らく緊張を緩和させるためか、看護師がやたらと話しかけてきた。
「緊張してる?」
「いえ、楽しみです」
「あら、珍しいねそういう人。たいていみんな、ここまで来ると怖くなるって云うんだけど」
「(やかましい)」
笑顔である。私は大人だ。
5分ほど歩き、手術室の前についた。テレビでしかまともに見たことのないような扉が、目の前に佇んでいた。緊張ではないが、なんだかむず痒い気持ちになってしまう。
付き添いに来ていた母とはここで別れ、私だけが中へ。これまたテレビでよく見る手術着を身に付けた担当者に引き継がれ、いよいよ手術室に。
新潟で救急車で運ばれたときに、実は部屋が空いてなかったため、使っていない手術室に押し込まれたことがあるので手術室自体は初めてではなかったが、まともに意識がある状態で入るのはこれが初めてだった。医師もまだ来ておらず、ゆっくりしてていいよ、と云われたため興味津津にあたりを見まわす。それにしても、ゆっくりしてていいよ、というのはどうだろう。一応手術前なのだが。まぁいいが。
とりあえずあまり準備の様子を眺めているのも申し訳ないと思いベッドに横になると、彼らはここぞとばかりに私の周りの準備を始めた。
まず心電図、血圧計をつけられ、そのあと腕をがっつりと手術台に固定された。
あまりにしっかりと固定されたので、私の表情は複雑そうになっていたのだと思う。固定していた手術助手が、苦笑しながら云う。
「両サイドに先生が立ちますから、念のためです」
念のためにしては些か度が過ぎている気がしたが、理由はわかるので納得する。確かに、手術中に患者の手が動いては気が散るだろう。
それからまた10分ほどで、手術着になった担当医と研修医が姿を現す。普段は白衣で胡散臭そうに見えるこの医師も、それなりの格好をすればそれなりに見えるものなのかと感心しつつ、着々と始まりそうになる雰囲気に、私の気分はそれなりに高揚していた。何せ、初めての手術が、最初から最後まで意識のある状態で行えるのだ。興奮するなと云うほうが無茶を云うと思う。個人的に一番見たい手術はACL再腱もしくは肩内視鏡下バンカート法術なのだが、それはまた置いておこう。
しかし。
私はこの時点で何かおかしいと思っていた。
明確な何かがあるわけではない。
曖昧で中途半端ではあるが、だが決定的に何かが、おかしいと思っていたのだ。
「先生、アレありませんよ」
「え、マジで?じゃあいいよ」
「アレの準備出来てる?」
「まだです、出てもません」
「えーちょっと早く出してよ」
「はいはい今出します」
「モニターに何も映ってないんだけど…」
「あら大変」
「まったく、ほんとだよ~しっかりしてよ!ねぇ?(←私に対して)」
ねぇ?じゃねーーーーーーよ^^^^
手術前だよな?
直前になって、緊張しない理由が分かった気がした。(ちなみにアレというのは、なんか器具のこと云ってたけど忘れた。)
この人たちに緊張感がなさすぎるのだ。
私は直感した。
―――こいつらおかしい。
仮にも患者がいるのだ。私が局麻で、意識を保って手術台に横たわっていることを知っているはずなのだ。
だというのに、あのような会話。神経質な患者だったら激怒してもおかしくない内容だと思うのだが、怒らなかった私は寛大だったのではないか。というよりも、呆気にとられて何を云えばいいのかわからなかったというのが正直なところだが、それにしても。
と、ここまで書いて飽きた^^
考えてみれば、最近まともな速度で更新をしていない私が、手術の光景すべて描写なんて無理に決まってた^^
でも骨が折れる感覚とか、頬の中を削られる感覚とか、内視鏡つっこまれる感覚とか、一生忘れない気がする。
ちなみに30分予定だったのが1時間半かかりました。
麻酔は効かなくて、通常の5~6倍使われました。
骨が厚かったうえに、鼻の中が狭くて道具が入らなくて苦労してました。
おかげで最初は和気あいあいと始まった手術も(それも絶対におかしい)、1時間を過ぎたあたりから先生のいらつきと焦りとで険悪な雰囲気に。お、おれのせいか…
で、結局、若干麻酔効いてなかったんですが、これ以上痛いって云ったら全麻になってもう一回手術になりそうだったので、我慢して削ってもらってしまいました。
すんげぇ痛かったけど、また手術になるよりましですわ。
伊達に、歯の治療を麻酔なしで受けた女ではないですよ、私は!
それを云ったら担当医におかしなものを見る目で見られましたが、
お前にそんな目で見られる覚えはない。断じて。
とりあえず無事終了!
たまに鼻血出るけど、健康!
ただ、解決したのは鼻だけなので、頚のほうは引き続き経過観察です。実はまだ痛い。もしかしたら、こっちも手術になるかもしれないのでドキドキです。次は全麻だけどね。
あ、ていうかそもそも私が局麻にしたのは手術の光景見たかったからなんだけど、残念ながら、モニターがちょうど先生の道具持ってる腕の位置にあったため、ほぼ見られませんでした。
「ほらこれ見える?」
「見えるか!!!」
云えなかった…お前の腕が邪魔なのだと、その一言が云えなかった…
ていうかモニター動くんだから、見える位置に移動してほしかった…
そんな感じ^^
あ、家に帰ってきたら、アフロと黒サガが届いてて発狂しそうになった
興奮したら本気で鼻血出るからダメなのに、あほほどテンションあがった…愛してる
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